Filvoir(フィルボワール)との出会いはTwitterだった、D2Cブランドの多くはSNSを通じて集客しファンを増やしてくがすでにブームとなり始めているD2Cも一部は飽和状態になっていた、僕がFilvoirを見つけた時すでにきちんとブランドが立っていて「すごいなぁ」と思った。
きっかけがあってデザイナーの深川さんと初めてお話しした時の第一印象はフワフワしていて穏やかな方で「なるほど、こんな人だからこの可愛らしいブランドなのか」と納得したのを覚えている。
しかし今回新-ARATASHI-で商品を出展してもらうにあたり初めて深く生い立ちのことやブランドのことなんかを深川さんに聞いてみると僕の認識が甘くて、ただフワフワしたブランドが立っているだけではなくそこにはとても熱くて深い原体験があり、深川さんの力強さを知り自分の浅はかさを猛省した。
この記事のなかではデザイン性だけではなく、コンセプトだけではなく、デザイナーの深川さんの人間性について紹介させてもらってお客様にそれが少しでも伝わればいいなと期待している。
取材をするにあたり失礼ながら僕から見た深川さんについて話してみた。
「深川さんってお嬢様で、育ちが良くて元々ロリータが好きで順風満帆にファッションを楽しんでる感じって言われませんか?」
そんな失礼な質問に「よく言われます!でも実は違うんですよ」と笑って答えてくれた。
「元々母子家庭で、母親が縫製の仕事をしていました。ずっとミシンをみて育っていて裕福な家庭ではなかったので高校を卒業したらすぐに働きたいと思っていたので手に職をつけようとファッション専門学校の高等科に入学しました、その後18歳からお直し屋さんでずっとミシンに乗っていました」
僕の母も縫製職人であったし、母子家庭出身なので親近感が湧いたのだけれどこう言う話をする時どこかネガティブというか暗い原体験を話すような雰囲気になることがある、しかし深川さんが話している時はそんな雰囲気を一切感じさせず凛としている印象があった。
「可愛い洋服が好きでした、ロリータもとても可愛いと思っていたんですが自分自身「自分なんて」と思ってしまって踏み出せず、社会人になってどうしてもしっかりしているように見せなきゃいけないと思うところもあって結局ロリータは1度も着なかったんです」
「自分なんて」と言う言葉は非常にカジュアルで、それでいて強い呪いだと僕は思う、好きなものが明確であってそのものがキラキラと素敵であればあるほど自分とのギャップを感じ自分なんかが手にとっていいものじゃないと感じてしまう。
そして「好き」には賞味期限があり気付いた頃には「好き」を楽しめなくなってしまうのだ。
深川さんも生まれながらのフワフワしたキャラクターによって「どこか抜けている」と言われることがあったそうだ、そんな自分を若い社会人として「きちんと見せないと」と意識するあまり本来着たいと思う洋服を着れなかったようだ。
そんな深川さんに「どうして服作りを始めたんですか?」と尋ねてみた
「結婚を機に退職して友人の結婚式のドレスを作ったり自分のウェディングドレスを作ったりしたんですが、ふと思い返してみると「自分のための服」って作ったことがあまりなかったんですよね、それがとても楽しくて友人に作ったドレスもとても喜んでもらって、今なら作りたい服を作れるんじゃないかと思って始めました」
と答えてくれた。
「可愛い洋服がやっぱり好きで、でも可愛い洋服は若い子が着るものって固定概念があってなかなかみんなが着ることができない。勇気を出して着ようと思っても歳を重ねた方が着ることができる上質な「可愛い」が無かったんです、だから作ろうと思いました」
その話を聞きながら自分の過去で重なる経験があった。
実は僕はファッションが好きな高校生だった、しかしある日知り合いに「変な服だね」と言われたことをきっかけにおしゃれをするのをやめてしまった。
「好きな服」ではなく「よく見える服」を選ぶようになった、そのまま大人になって経営者になって「経営者としてしっかりした服」を選ぶようになった。
知らず知らずのうちに自分の「好きな服」を忘れてしまっていて、いつしか一人で服屋さんにいくことすらできなくなった、
服屋さんに行っても「よく見える服」は選ぶことができるが「好きな服」を選ぶことができなくなってしまっていたのだ。
だから深川さんが「昔着たくても、着れなかった服をやっぱり着たいし作りたい」と思って行動していることにとても嫉妬したし、心が動かされた。
こんな経験実は読者の皆さんもあるんじゃないだろうか、自分の好きだけで判断できていたはずなのにしがらみが増えるがために選択肢が自分以外の何かによって曲がってしまう。
深川さんはFilvoirと言うブランドを通してそこに挑戦しているんじゃないだろうか、そしてその姿がとても強く凛としてる、だから応援したくなる。
いつも人が何かに挑戦する姿は人を魅了する。
「今までで一番嬉しかったのは試着会に初めて来られたお客様は「こういう服一度は着てみたかった」と喜んでくれたことなんです、Filvoirの服は着てくれたお客様が階段を1段上がれるような服でありたいと思っています」
こう話してくれたのも実際に挑戦を始めて自分自身が階段を上りはじめた経験があるからか、とてもストレートに心に響いた。
いつも服作りする時にはどんなことを心がけていますか?と最後に聞いてみたら
「お客様の綺麗や可愛いを引き立たせられますようにと願いをこめています」
と言ってくれた
「Filvoirのお洋服のページを勇気を出してみてくれたり、試着会に来てくれる時点でその勇気がすごく美しく、試着をされた方の背筋が試着前と比べてとても伸びているんです、その姿もとてもとても美しいだから「私なんて」とか「私には似合わない」なんてことは言ってもらいたくないんです、だってみなさん生まれながらにして美しいんですから」
人は生まれながらにして美しい。
その言葉に全くの嘘偽りを感じなかったのは深川さん自身が「自分なんて」を乗り越えているからだろう。
「今幸せですか?」と聞いたら「とても幸せです」と笑ってくれたのが全てを物語っていると思う。
Filvoirは可愛い服だ、でもとても強い意志や原体験を通して美しい洋服なんだろうなと感じた。
ありきたりな言葉だけれど人生は1度きりだ、それを年齢や状況を鑑みて「自分なんて」と言っているとしたらもったいない。
着なくてもいいし買わなくてもいいから、一度深川さんに会ってみて欲しいな。そんな風に思った。
Filvoirのヴィオラドレスは2021年12/3-12までの限定販売です。
ぜひ今のうちにご覧くださいね。
https://aratashifashion.com/products/filvoir