KAIKI-1001回着て欲しい服作り-

KAIKI-1001回着て欲しい服作り-

KAIKIのデザイナーの飯尾さんとはもう5年くらいの付き合いになる。

5年というと少し浅く感じるが僕が服作りの業界に飛び込んだのが5年と少し前なので服作りを始めてすぐに出会ったのだ。

2017年にNHKの密着取材が僕についてくれていた時取材に協力してくれたのもKAIKIさんだった。

僕にとって"デザイナー"との出会いの原点であるもののそのブランドの在り方であるとかコンセプチュアルな部分にはあまり触れることはなく縫製工場とデザイナーとしての関係をバランスよく保ちなんだかんだで5年が過ぎている。

今回 新-ARATASHI- を始めるにあたって初めて縫製工場とデザイナーの関係を少しだけ超えて取材をさせていただいたのだが新しい発見とも言えるような、元々知っていたかのようなそんなKAIKIの姿を見ることができた。

 

「元々アパレル企業に勤めているときに内緒でブランドを起こしたのがきっかけです、なんとなく成り行きでブランドを始めて、会社にばれたりなんかして(笑)」

飯尾さんはそんな風に笑っていた、KAIKIは大きな志や社会の歪みのような場所から強いパワーで生み出されたファッションではなくすごく自然にフェードインしたブランドなのだと感じた、ブランドのコンセプトについて尋ねてみると

「実は明確なコンセプトって決めてないんですよね」

と少し肩透かしにあった気がした、しかし話を聞いていくと「なんだ、しっかりとあるじゃないですか」と少し悔しい気分になっていく事になる。

「気分のいい服を作りたいんです、ほらサイズがぴったりでハマるところにハマっていい素材の服を着ると心と身体に一本串が通るような感覚になりますよね、言葉では説明が難しいんですけど、そんな洋服を作りたいと思っています」

そんなKAIKIが作りたい洋服はファッションアディクトな人たちに好き好まれる熱烈なものではなく、着るひとの日常に取り入れられるようなそんな洋服である。

「僕は半年間で同じ型のシャツは2枚、パンツも2枚をずっと着まわしているんですよね、カフスがすり減って芯地が見えてきたりしてそれでも自分にぴったりの洋服は心が落ち着くんですよね、周りからはデザイナーなんだからもっといろんな洋服を着たらいいのにって言われますが(笑)」

KAIKIではコレクションで発表する商品の半分はすでに完成している型紙をリユースしている。

毎回ブラッシュアップはしているものの今回商品で出されているブラウスやパンツはブランドを本格的に開始した6年前に作られた原型を使用している。

「例えば最初は一張羅で、月に数回しか着ない、でも徐々にクタクタになってくるとデートでは着れないけど1マイルウェアとして着るようになったり、最後は部屋着になったりして最後はもうボロボロで二次流通にも回せないような状態まで着てもらって最後はサヨナラするんですけど、その時にまたKAIKIの服を買ってくれると同じ原型を使っているからサイズはぴったりとハマって安心できる、でもテキスタイルは違ったりしてドキドキもできるんですよ」

 

何回くらい着てもらったら合格ですかね?

と、少し意地悪な質問をしてみたら

「ん〜1万回とか言い出すと現実味ないですからね、1000回以上ですかね?」

と答えてくれた。

KAIKIが狙っているかどうかは別として僕が頭に浮かべる理想的なサスティナブルファッションの姿だった、すごいと感じるのはKAIKIはそれを狙っているわけではなくそれを自然のままに実行しているからなのだ。

実際にユーザーの一人にKAIKIの洋服について聞くことができたのだが

「KAIKIの服はハンガーにかかっている時も、もちろん素敵なのですがなによりもき着た時のときめきが半端なく、それはきっと人が着るということをしっかりと考えられて作られているからなんだろうなと思います。だからこそKAIKIの服は生活に、そして体にとても馴染む服になっていて、着るだけで心地よく日々を過ごせます。そのため私は毎朝、服を着る時についつい手に取ってしまい、いつもKAIKIを来ています。(笑)」

 

こう答えてくれた、今回コメントをいただいた方もお名前は伏せさせていただいているが芸能関係のお仕事をされていて自分の心と身体に一本串を刺すことができるKAIKIのファンになっていただいているのではないだろうか。

そしてKAIKIのファンもデザイナーもクローゼットからはいつも同じ洋服を選んでしまう、そんな共通点があるようで面白かった。

 

KAIKIというブランドを一言で言うと「自然」だと僕は思った、あるがままに日常生活の中に溶け込んでいく非常に心地の良い洋服であるがテキスタイルや型紙のブラッシュアップによりただ穏やかなだけではない刺激が生まれている。

この穏やかさとワクワク感というのは飯尾さんのライフスタイルがそのままブランドに表現されているようだ。

「生地を選ぶ時ってレコードを選んでるみたいなんです」

棚の中からレコードをパラパラと探してジャケットを見てピックアップしていく、それと同じように生地のスワッチ(生地サンプル)をパラパラと指で触っていくと「これだ」と思うものに出会える、

「指の感覚が喜んでるみたいな感覚」と表現された当たりに出会えるのである。

年間30回以上地方に出て旗屋さんに会って生地を選ぶんですよと聞いて「めちゃくちゃ真面目ですね」と言ったら「そうじゃないんです」と言ってくれた、

「地方に行ってご当地グルメを食べて、生地屋さんと楽しい話をしてその中から新しいクリエイションが生まれていく、そして生地を選んでるけど趣味のレコードを選んでるのと同じですよ、それに地方の生地屋さんってめちゃくちゃ面白くてなんだこれ!って生地があったりしてそれを自分が洋服にして、それをお客様が買ってくれてクローゼットに入れてもらって着てもらって完成されていく、なんだかそれが面白くて、元々「なんだこれ」ってものが人の生活に取り込まれていくのって面白いんですよね」

ヨーロッパのブランドが強烈なインパクトによってブランディングされていくとすると「日本のブランドとは?」という問いの答えの一つがここにあるような気持ちになった。

欧米のブランドが「絶対性」だとすると日本のブランドは「相対性」や「共存性」が強みの一つである。

KAIKIの場合旅して人に出会いレコードを選ぶように生地を選び、

コミュニケーションの中からクリエイションが生まれ、

「なんだこれ」という好奇心からドキドキが生まれお客様が着用して服になり、

1001回くらい着たらさよならして、また新しい安心とワクワクに出会う。

そんな流れのどの部分を切り取っても人がいて、誰かと誰かが何かを楽しんでいる。そんな共存性がブランドを作っているのだと感じるのである。

「ブランドコンセプトは特に決めてない」

そんなことを言っていたが取材を終える頃にはKAIKIに対する見方が変わっていた、というか改めて好きになっていた。

コンセプトは言語ではなく「共通認識」である、その認識の中心が飯尾さんなのだから飯尾さん自身を一言で語ることは難しく、その分知れば知るほどに好きになるブランドなのだ。

コンセプトがない、のではなく「特に決めていない」だけなのである。

最後に今回作った洋服について聞いてみたらこれもこれとて非常にKAIKIらしいエピソードがあった。

「今回は有延商店っていう播州の生地屋さんの生地を使ってるんですけどね、現地に行って「新作を見せてください」って言ったら「まだできてない」って言われちゃって、それでシーズン終わってから「やっとできた」ってスワッチを送ってくれたんですよ、結局コレクションに間に合わなかったけど、めちゃくちゃ良い生地だったので今回この生地を使うことにしました」

地方の生地屋さんの素材を積極的に使うことで産地を助けるみたいな気持ちはあるんですか?そう尋ねてみると

「ん〜純粋に話していて楽しいし、発見があって面白いし、365日生地のこと考えているので自分よりも知っているので」と答えてくれた、この純粋なワクワク感がKAIKIなんだろうな。

だから人が寄ってきて、面白くて安心できる洋服が生まれていくんだろうな。

そんなことを感じる取材だった。

今回のコレクションは12/12までの限定受注です、ぜひこれを機にKAIKIの洋服を迎えてみてはいかがでしょうか。

 

 

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